490.息子なのに名前すら持つ資格がないのか？

こぶたは二位になったものの、表彰台に上がれたことで、一位でないことなど全く気にしていなかった。

藤堂澄人は今日、妻を思う存分甘やかすことができ、それが今日最大の収穫で、それに伴って気分も随分よくなった。

主要な助っ人となったこぶたに対して、藤堂澄人は当然ご褒美を与えなければならなかった。

表彰台を降りる時、藤堂澄人は北条春生の傍を歩きながら、何気ない口調で話しかけた：

「北条グループもA市のバタフライ広場プロジェクトの入札に参加したと聞いたが？」

北条春生は藤堂グループが発注元だと知っていたが、なぜ突然この話題を持ち出したのかわからず、淡々とした目つきで彼を一瞥して、「ああ」と答えた。

「息子の顔を立てて、このプロジェクトは直接北条グループに任せよう。礼は不要だ」

そう言い終わると、九条結衣の手を引き、息子を抱きながら悠々と立ち去った。

北条春生は訳が分からない表情で彼の背中を見つめ、自分の息子の面子が自分よりも大きいことに完全に戸惑っていた。

競技が終わった後、参加家族は次々と幼稚園を後にし、藤堂グループの運転手はすでに幼稚園の門前で待機していた。

三人家族が出発しようとした時、先ほど九条初を転ばせた家族が慌てて駆け寄り、彼らの前に立ちはだかった。

藤堂澄人の表情は、瞬時に冷たくなった。

「藤堂さん、今日のことは本当に申し訳ありません。でも妻は故意ではなかったんです。あなたは...このように理不尽な対応をするべきではありません」

その男性は本当に藤堂澄人に怯えていて、この一日競技どころではなく、ただ藤堂澄人にどう許しを請うかばかり考えていた。

藤堂澄人は眉を軽く上げ、目の前の男を見つめながら、目には冷たい光を宿して言った。「理を通したいと？」

男性は藤堂澄人の目に宿る冷気に怯え、ただ呆然と彼を見つめ、どう答えればいいのか分からなかった。

藤堂澄人は彼の返事を待つまでもなく、彼らを園区まで見送っていた金田社長の方を向いて言った：

「監視カメラの映像を見せてやれ」

これを聞いて、男性の顔色が急変した。

彼が藤堂澄人を訪ねてきた時は、監視カメラのことなど考えもしなかった。ただ藤堂澄人が当時の状況を見ていなかったのではないかという甘い考えで、許しを請いに来たのだった。