九条結衣は一瞬固まり、さっきの違和感の原因に気づいた。「ダーリン」という言葉に鳥肌が立った。
「黙って、普通の男らしく振る舞えないの?」
藤堂澄人の口元の笑みが一瞬凍りついた後、軽く笑い、照れくさそうに鼻先を撫でながら「はい、言う通りにします」と答えた。
九条結衣は澄人を無視し、九条初とおもちゃコーナーで遊んでいた時、スーパーマーケット内で突然大きな騒ぎが起こった。
続いて、悲鳴が次々と響き渡った。
音のする方を見ると、ジャケットを着た中年男性が、18インチのイギリス式の包丁を手に持ち、混雑した人々の間を縫うように歩き回り、目の前の人を次々と切りつけていた。
すでに多くの人々が切りつけられて倒れ、血を流していた。
助けを求める声や泣き叫ぶ声が、混雑したスーパーマーケット内で次々と響き渡った。