担当者が後から駆けつけ、藤堂澄人を見た瞬間、表情を硬くし、急いで彼の前に歩み寄った。「藤堂さん、大丈夫ですか?」
担当者は緊張した様子で、もし藤堂澄人が自分の管轄区域で何か問題が起きたら、大変なことになると思った。
藤堂澄人の肘には、いつの間にか深い切り傷ができており、今も血が流れていた。
「藤堂さん、怪我をされています。病院にお連れしましょう。」
「必要ない。」
藤堂澄人は淡々と答え、肘の傷が骨まで見えるほど深かったにもかかわらず、眉一つ動かさなかった。
さりげなく袖を下ろすと、妻と子供を探しに向かった。
ショッピングモールはすでにあの狂人によって大混乱に陥っており、多くの人が切りつけられ、一人が死亡するほどの惨事となり、血が床一面に広がっていた。
警察はすでにその狂人を取り押さえ、現場の秩序も少しずつ回復していた。
「結衣。」
九条結衣は藤堂澄人に背を向けて九条初をなだめていたが、藤堂澄人の緊張した声を聞いて、素早く振り返った。
藤堂澄人はすでに母子の傍らにしゃがみ込み、長い腕で彼女の体を抱き寄せ、軽く背中を叩いた。「大丈夫だ、すべて解決した。」
九条結衣は頷き、藤堂澄人の顔色が悪いのを見て、彼を上から下まで注意深く観察し、尋ねた。「あなたは?あの人に切られなかった?」
九条結衣が自分のことを心配してくれているのを見て、藤堂澄人は心の中で喜び、思わず口角が上がった。「僕のことを心配してくれているの?」
九条結衣はその質問に一瞬言葉に詰まったが、表情は平然としたまま答えた。「怪我をしたら、明日九条初の運動会に付き添えないでしょう。」
九条結衣は自分への心配を認めなかったが、藤堂澄人は先ほどの彼女の目に浮かんでいた心配そうな眼差しを思い出し、心の中で抑えきれないほどの喜びを感じていた。
しかし口には出さず、「心配しないで、大丈夫だ」と言った。
先ほどの恐ろしい出来事を経験し、スーパーの人々も次々と帰っていき、彼らも買い物をほぼ済ませていたので、会計を済ませて帰ることにした。
九条初もスーパーでの出来事に怯えており、家に帰ってからも怖がって九条結衣から離れようとしなかった。
一時間以上かけてようやく九条初は眠りについた。
「もう遅いから、早く寝なさい。私は出ていくよ。」