藤堂澄人が外出したときの表情がおかしかった。もしかして、商業施設で怪我をしていたのだろうか?
急いで寝室のドアを開けて出ると、向かいの客室のドアが半開きで、中は真っ暗だった。
階下のリビングでは、薄暗い常夜灯が点いており、その下で藤堂澄人が一人でソファに座っていた。右腕の袖をまくり上げ、逞しい腕と……
そして腕の上にある目を背けたくなるような傷が露わになっていた。
刃物で切られた傷は肉が外に反り返り、腕全体が血で染まっていた。彼が黒いシャツを着ていて、夜遅かったため、シャツが血に染まっていることに彼女は全く気付かなかった。
今、藤堂澄人はアルコール綿で傷口の周りの血を拭っていた。九条結衣に気付かれないように、一つ一つの動作を慎重に行っていた。
薄暗い灯りに照らされた彼の孤独な姿。リビングで、藤堂澄人の大きな体は、この時ひときわ寂しげに見えた。