藤堂澄人が外出したときの表情がおかしかった。もしかして、商業施設で怪我をしていたのだろうか?
急いで寝室のドアを開けて出ると、向かいの客室のドアが半開きで、中は真っ暗だった。
階下のリビングでは、薄暗い常夜灯が点いており、その下で藤堂澄人が一人でソファに座っていた。右腕の袖をまくり上げ、逞しい腕と……
そして腕の上にある目を背けたくなるような傷が露わになっていた。
刃物で切られた傷は肉が外に反り返り、腕全体が血で染まっていた。彼が黒いシャツを着ていて、夜遅かったため、シャツが血に染まっていることに彼女は全く気付かなかった。
今、藤堂澄人はアルコール綿で傷口の周りの血を拭っていた。九条結衣に気付かれないように、一つ一つの動作を慎重に行っていた。
薄暗い灯りに照らされた彼の孤独な姿。リビングで、藤堂澄人の大きな体は、この時ひときわ寂しげに見えた。
九条結衣は階段の入り口に立ち、彼が不器用に自分の傷の手当てをする様子を見ていた。しかし傷口が大きく開いていたため、出血が止まらなかった。
九条結衣には想像もつかなかった。彼がどうやって商業施設から家まで我慢して帰り、さらに九条初が寝るのを待って一時間以上も我慢してから下りてきて傷の手当てをしたのか。
彼が彼女の部屋を出たとき、彼女はシャワーまで浴びていた。そして彼が傷の手当てを始めたのは明らかにたった今だった。もしかして、彼女が寝たと思って、こっそり下りてきて手当てを始めたのだろうか?
そう考えると、九条結衣の胸が締め付けられ、居心地が悪くなった。特に、彼がソファに一人で座り、傷の手当てをしようとしても上手くいかない様子を見ていると、胸が自然と痛くなってきた。
藤堂澄人は九条結衣を心配させたくなかったため、彼女の前では怪我をしている様子を少しも見せず、当然真夜中に病院に行くこともできなかった。
ガーゼと軟膏で適当に処置すれば良いと思い、玄関の棚にある救急箱を持ってきた。
しかし傷が大きすぎて、ガーゼを一周巻いただけですぐに血が染み出してきた。
何度か試してみたが、思わず低い声で罵り声を上げた。次の瞬間、目の前のもともと明るくない光が、突然黒い影に遮られた。
藤堂澄人の手の動きが突然止まり、急いで顔を上げると、九条結衣の冷たい視線と目が合い、反射的に怪我をした腕を背中の後ろに隠した。