藤堂澄人は痛くないと言おうとしたが、妻の心配そうな目を見て、すぐに頷いて眉をひそめながら言った。「うん、とても痛い」
「我慢して」
藤堂澄人:「……」
妻が優しく慰めてくれるか、「優しくするね」とか「奥さんが吹いてあげる」とか言ってくれると思っていたのに、彼女はそんな無情な二言で彼を奈落の底に突き落とした。
九条結衣は彼の驚いた表情を見て、視線を外し、口角が少し上がり、そして彼の傷の手当てを始めた。
麻酔をしていたため、九条結衣が縫合している時はあまり感覚がなかった。藤堂澄人は自分の前で半蹲みになっている女性を見つめていた。前回のホテルでの時と同じように。
しかし、似たような状況でも、心境は全く違っていた。
あの時は、結衣が完全に自分から離れていくと深く感じ、一瞬にして全てを失うような感覚に、生きる意味を失うほどの痛みを知った。