473.出産を促す隊長のこぶた

そこで、運動会が始まったばかりの頃、多くの人が自分の妻を藤堂澄人の妻と親しくさせることで、藤堂澄人との縁を作ろうと考えていた。

九条結衣もバカではないので、彼らのそんな下心が分からないはずがない。ただ、藤堂澄人という人物の影響力が大きすぎて、彼女と九条初は彼の恩恵を受けているだけだった。

これらの人々が目的を持って近づいてくることは分かっていたが、笑顔で接してくる人を突き放すのも良くない。九条結衣は藤堂澄人の力を笠に着て、人を見下すような傲慢な人間ではなかった。

「奥様方」が彼女と話しかけてきても、彼女はとても礼儀正しく対応していた。

ただし、彼女たちが意図的に話題を藤堂グループの業務に向け、藤堂グループとの協力を求めようとしても、彼女は巧みにその話題を避けていた。

その人たちも九条結衣がビジネスの話題を避けたがっているのを察したのか、賢明にもそれ以上触れなかった。

そんな時、九条結衣は自分の服の裾が軽く引っ張られるのを感じた。

九条結衣が下を向くと、ぽっちゃりした小さな男の子が彼女の足元に立ち、大きな頭を上げて真剣な表情で彼女を見つめていた。

「おばさん、九条初のママなの？」

ぽっちゃりした男の子はとても可愛らしく、整った顔立ちをしていて、その愛らしい姿に九条結衣は思わず頬をつねりたくなった。

彼の前にしゃがみ込んで、「そうよ、私が九条初のママよ」

「おばさん、九条初のパパと一緒に女の子の赤ちゃん作れない？九条初、女の子の赤ちゃん大好きなの」

九条結衣：「……」

彼女はこのぽっちゃり君が誰なのか、だいたい分かった。

そして、ちょうど九条初と遊び終わって九条結衣を探しに戻ってきた藤堂澄人がこの言葉を聞いて、眉を軽く上げた。

妻を追いかける道のりで強力な助っ人として、多忙を極める藤堂家当主は一目でこのぽっちゃり君が誰か分かった。

そして惜しみなく優しい眼差しを向けた。

「こぶた！」

親友を見つけた九条初はすぐに駆け寄り、九条結衣の手を引いて紹介した。「ママ、この子がこぶただよ。家にぷにぷにっていう妹がいて、すっごく可愛いんだ」

こぶた、ぷにぷに……

本当に庶民的な名前だ。

「おばさん、僕の妹のぷにぷにはすっごく可愛くて、ママみたいに綺麗なの。おじさんと一緒に女の子の赤ちゃん作ってよ」

九条結衣：「……」