536.彼がいないと、心が空っぽ

九条初は首を振って、憂鬱そうな表情を浮かべた。「ママ、パパはまたママを怒らせて追い出されちゃったの?」

九条結衣は一瞬驚いたが、すぐに笑顔で説明した。「もちろんそんなことないわ。昨日パパが出張に行くって言ってたの、忘れちゃったの?二、三日したら帰ってくるわよ」

「本当?」

その言葉を聞いて、九条初の目が一気に輝いた。

「もちろん本当よ。ママが嘘をつくわけないでしょう」

九条結衣はそう言いながら、ベッドから起き上がって身支度を始めた。

着替えを済ませ、息子と一緒に階下に降りると、ダイニングテーブルにA4用紙が置かれているのが目に入った。そこには一行の文字が書かれていた——

【朝食は保温ボックスに入れておいたよ。起きたら必ず食べてね。先に行くけど、僕が君を想うように、君も僕のことを想っていてほしい】