537.事件発生

九条初はリビングに立って、期待に満ちた表情を浮かべていた。

九条結衣は一瞬戸惑い、笑って言った。「パパは大事な仕事があるの。でも二、三日したら帰ってくるって約束してくれたわ。仕事が終わったら、きっと帰ってくるわよ」

彼女は手を伸ばして九条初の頭を撫でながら言った。「いい子ね。ここで絵本を読んでいてちょうだい。ママは夕ご飯を作りに行くわ」

九条結衣が料理を作ると聞いて、九条初の表情が一変した。「やっぱり...やっぱりやめておいた方がいいんじゃない？」

九条結衣：「……」

そこまで嫌がることないじゃない。私の料理がそんなにまずいの？

九条初くんはママの手を引っ張って、甘えるように揺らしながら提案した。

「ママ、パパが帰ってくるまで、外食にしない？ママが仕事もして、僕のためにご飯も作るなんて、大変だと思うから」

九条結衣：「……」

明らかに料理がまずいから嫌がってるのに、疲れさせたくないなんて言い訳して。

文句を言うにしても上手な言い方ね。この子、感情知能が高いわ。

九条結衣は彼をからかってみようと思い、こう言った。「あなたのために料理を作るのは、ママにとって嬉しいことよ。何も大変じゃないわ」

彼女は優しく息子の頭を撫でながら言った。「いい子ね。待っていてちょうだい。ママ、すぐにご飯を作るから」

「ママ、やめて！！」

九条初は短い両腕で九条結衣の足にしがみついた。手を離したら、本当にママが料理を作りに行ってしまうのではないかと恐れていた。

うぅ〜パパ、早く帰ってきて。ママに料理を作らせちゃダメだよ。本当にまずいんだから〜

九条結衣は息子のおびえた様子を見て、思わず口角を引きつらせた。

本当に実の子供ね。

まあいいわ、もう脅かすのはやめにしましょう。

簡単に身支度を整えると、彼女は九条初を連れて夕食を食べに出かけた。ついでにスーパーで簡単な朝食も買い込んで、家に帰ったときには夜の7時過ぎだった。

「先にお風呂に入りなさい。後でママがお話を読んであげるわ」

息子の日常的な成長を疎かにしていたことに気づいてから、九条結衣は家にいるときは、できるだけ多くの時間を彼と過ごすようにしていた。

ちょうど階段を上ろうとしたとき、九条結衣の携帯が鳴った。CEOの宮崎裕司からの電話だった——

「社長、大変なことが起きました」