藤堂澄人は無邪気な表情で彼女を見つめ、「証拠が見たいんじゃないの?証拠は私の体にあるよ」と言った。
彼の言葉に、九条結衣は先ほどの記憶の中の光景を思い出した。
彼女は藤堂澄人の上に跨って強引にキスをした。その後の記憶は途切れているものの、その状況から考えると、恥ずかしいことをしてしまった可能性が高かった。
そう考えると、九条結衣の瞳が一瞬縮んだ。藤堂澄人が言う「証拠は体にある」という言葉と合わせて考えると、九条結衣は即座にその話題を避けることにした。
藤堂澄人が気付かないうちに、素早く彼の上から降りて、「藤堂澄人、私はあなたの罠にはかからないわ」と言った。
そう言って、階段の方へ歩き出した。
おそらく後ろめたさからか、足取りが少し早くなっていた。
「待て」
背後から藤堂澄人の声が聞こえた。低く、不満げな声色だった。