558.藤堂社長の一手で、真価が分かる

「だから、私のせいで私の妻に手を出したというわけか?」

藤堂澄人は眉を上げた。

「は...はい、藤堂さん、私は本当にあなたのことが好きなんです。名分なんて求めません。ただそばにいて、お世話させていただければそれでいいんです。愛人でも構いません」

愛人にまでなる覚悟を示した小林由香里は、これだけ自分を低く置いているのだから、藤堂澄人が心を動かされ、見逃してくれるだろうと思っていた。

しかし、彼女は藤堂澄人の冷酷さを甘く見すぎていた。

「愛人?お前のどこに魅力があると思っているんだ?醜くて貧乏で愚かなところか?」

松本裕司:「……」

うちのボスは、まさに金剛石だ!

とはいえ、松本裕司は自分のボスの言葉に同意していた。奥様の方が彼女より美しく、賢く、裕福だ。ボスが目が見えなくなったとしても、奥様を捨てて、このような不純な動機を持つ愚かな女を選ぶはずがない。

小林由香里は、藤堂澄人が彼女のこの姿を見て、このように恵らしく可憐な美女が心を尽くして告白すれば、きっと心を動かされると思っていた。

しかし、予想に反して、彼は心を動かされるどころか、さらに侮辱的な言葉を投げかけた。

彼女は藤堂澄人の目に宿る殺意の冷たさを信じられない思いで見つめ、顔から血の気が完全に引いた。

彼女には全く分かっていなかった。藤堂澄人の周りで彼を狙う女性たちは、誰一人として小林由香里より劣っていない。それなのに、なぜ自分がそれらの女性たちよりも優れていると思い込んでいたのか。

「それとも...私の妻と息子に手を出したのに、私が慈悲深く許すと思ったのか?」

言葉が落ちると、藤堂澄人の目に宿る閻魔様のような冷たい気配がさらに濃くなった。

もしこの女を許したら、妻はまた離婚を持ち出すだろう。

九牛二虎の力を使って、やっと半分だけ妻を取り戻したのに、また彼女を不機嫌にさせるわけにはいかない。

そう考えながら、藤堂澄人は心の中で決意を固めた。早急に再婚の手続きを済ませなければならない。外のろくでもない男に妻を奪われるわけにはいかないのだから。

小林由香里は藤堂澄人の目に宿る容赦のない殺意を見て、さらに激しく体を震わせた。

もはや自分の容姿で藤堂澄人を魅了できるなどという思い上がった考えは捨て、ただ命乞いをすることしかできなかった。