515.君じゃなければ、一生独り身

九条結衣は頷いて、躊躇いのない表情で言った。「でも、一つ条件があります」

「いいよ、言ってごらん。どんな条件でも受け入れるから」

藤堂澄人の目は狂喜の光を放ち、すぐに頷いた。

「再婚したら、同じ屋根の下で暮らすことになるけど、あなたは……」

ここまで言って、九条結衣は一旦言葉を切った。言おうとしていることが、少し言い出しにくかった。

「何ができないの?」

「勝手に私を……えっと、からかわないでください」

彼女は遠回しに言ったが、伝えたい意味は明確だった。言い終わると、耳まで赤くなった。

藤堂澄人は一瞬驚いたが、すぐに九条結衣の言葉の意味を理解し、躊躇なく頷いた。「わかった。勝手なことはしないと約束する」

妻を からかうなんて、彼はいつも真剣にやっていたのだ。いつ勝手なことをしたことがあっただろうか?

九条結衣は彼がそんなにも即答したのを見て、少し驚いた。何かおかしいと感じたが、よく考えてみると、特におかしなところはなかった。

物思いに耽りながら藤堂澄人を見つめ、眉をしかめた。

「それから……」

少し考えてから、彼女は続けた。「私のことに勝手に口を出さないでください。私がやりたいことをやらせてください」

「いいよ」

彼はもともと妻のことに勝手に口を出すつもりはなかったが、もし誰かが彼女をいじめるようなことがあれば、それは単なる口出し以上のことになるだろう。

九条結衣は藤堂澄人の心の中にそんな複雑な考えがあることを知らず、彼が承諾したのを見て、前もって考えていたことを初めて話し出した。

「もう一つ、もし私が将来他の男性を好きになったら、私の恋愛に干渉しないでください。別れたいと言ったら、拒否しないでください。もちろん、あなたが他の女性を好きになっても、私も……んっ」

言葉が終わらないうちに、唇は藤堂澄人に強引に塞がれた。

彼女の後頭部を押さえる力が少し強くなり、さらには怒りの感情さえ含まれているようだった。

「どんな条件でも受け入れられるが、これだけは駄目だ!」

彼は深い眼差しで九条結衣を見つめ、先ほどまでの喜びに満ちた瞳は今や険しさを帯びていた。「俺はお前以外の女性を好きになることはない。そして、お前が俺以外の男を好きになることも許さない!」