515.君じゃなければ、一生独り身

九条結衣は頷いて、躊躇いのない表情で言った。「でも、一つ条件があります」

「いいよ、言ってごらん。どんな条件でも受け入れるから」

藤堂澄人の目は狂喜の光を放ち、すぐに頷いた。

「再婚したら、同じ屋根の下で暮らすことになるけど、あなたは……」

ここまで言って、九条結衣は一旦言葉を切った。言おうとしていることが、少し言い出しにくかった。

「何ができないの?」

「勝手に私を……えっと、からかわないでください」

彼女は遠回しに言ったが、伝えたい意味は明確だった。言い終わると、耳まで赤くなった。

藤堂澄人は一瞬驚いたが、すぐに九条結衣の言葉の意味を理解し、躊躇なく頷いた。「わかった。勝手なことはしないと約束する」

妻を からかうなんて、彼はいつも真剣にやっていたのだ。いつ勝手なことをしたことがあっただろうか?