598.金の匂いがする侮辱

三年間見つめ続けた天井と、三年間寝続けたベッドを見つめながら、今、かつて憧れていた男性が突然そばにいることに、胸が詰まる思いがした。

藤堂澄人に後ろから抱きしめられ、鼻先には彼の体から漂う柔らかいボディーソープの香りがした。

今回、彼は本当に大人しく、抱きしめる以外は何もしなかった。

九条結衣も彼に抱かれるままにしていた。かつて何度も、藤堂澄人にこうして後ろから抱きしめられたらどんな気持ちになるだろうと想像していたが、こんな感じなのだと分かった。

彼だけが与えてくれる安らぎと平穏。

九条結衣は今回A市に戻った際、当然、九条初を連れて九条家に行き、九条爺さんに会いに行った。

爺さんは愛しい曾孫に会えて、この上なく喜んでいた。

爺さんの話によると、九条政と木村富子はまだ結婚できておらず、木村靖子の方は、藤堂グループの「配慮」により、10年の実刑判決を受けたとのことだった。

この間、九条政はまだ諦めきれず、木村靖子のために奔走し続けていた。

九条結衣は今や彼ら三人の私事にまったく興味がなく、当然それ以上は聞かなかった。

九条家にいる時、九条結衣は夏川雫から電話を受けた。

夏川雫は彼女がA市に戻ってきたことを知り、とても喜んで、すぐに食事に誘ってきた。

九条結衣は快く承諾し、初は曾祖父の私設武器庫から出たがらなかったので、そのままにしておいた。

夏川雫と市の中心部にある大型ショッピングモールで待ち合わせた。前回会った時と比べて、夏川雫はさらに痩せていた。

もともと背が高く、ショートヘアだったこともあり、より一層痩せて見えた。

「どうしてそんなに痩せちゃったの?事務所の方が忙しいの?」

先日、事務所のトラブルは解決したと聞いていたのに。

夏川雫が無意識に少しくぼんだ頬に手を当て、目の中の暗さを押し隠しながら、気にしない様子で手を振って言った。

「うん、忙しいわ。仕事は順調よ。それに、最近ダイエットしてるの。」

夏川雫は無意識に自分の腹部に手を当てながら、さりげなく言った。

九条結衣は彼女の紙のように薄い体を見て、思わず眉をひそめた。「こんなに痩せてるのに、まだダイエット?」

「知らないの?骨感美人っていうのよ。私みたいな法廷で立ち続ける知的な女性は、常にベストな状態を保たないといけないの。痩せてる方が健康的で元気に見えるでしょ?」