597.絶対に手加減しない

九条結衣は彼を睨みつけ、視線を外した。

藤堂澄人はにやにやしながら近づいてきた。「痛かった?じゃあ、旦那さんが吹いてあげる」

そう言いながら、唇を近づけてきたが、九条結衣に遮られた。

藤堂澄人は今回は強引に迫ることはせず、九条結衣を抱きしめながら、急に真面目な口調になった。「お前」

九条結衣は彼を一瞥して、「また何か言いたいの?」

「俺たちが結婚してた三年間、藤堂瞳はお前に何を言ってたんだ?」

彼は以前から、藤堂瞳が九条結衣の前で、木村靖子が彼の本当の愛で、九条結衣が彼と木村靖子の仲を壊したといった類の話をしていたことを推測できていた。

以前は恨みを抱えていたから、説明したくなかった。あの時、木村靖子の存在を知っていても彼に問いただすことはなかった彼女を見て、彼のことなど全く気にかけていないのだと思っていた。