藤堂澄人は少し不本意そうに鼻先を触り、低い声で答えた。「覚えてる」
「聞かせて」
「同じ部屋にいても、むやみに君に手を出してはいけない」
藤堂澄人は九条結衣を見つめ、真面目な表情で答えた。
「覚えてるなら、その手をどけなさい」
「でも、奥さん……」
藤堂澄人は意地悪そうに近づいて、「僕がいつむやみに君に手を出したことがある?」
手を出してない?
今も彼女の太ももを触っているその手は誰のもの?
この手を切り落とさないと認めないつもり?
九条結衣が反論しようとした時、藤堂澄人が意地悪な笑みを浮かべながら近づき、彼女の指を掴んで自分の口に入れて軽く噛んだ。
九条結衣:「……」
「僕は毎回真剣に君に手を出してるんだ。むやみなんかじゃない」
言葉が終わるや否や、九条結衣は足で彼を脇へ蹴り飛ばした。