595.再婚の時に約束したこと

彼女は、この獣のような男が浴室の鍵を持っているかもしれないことを忘れていた。

身に巻きつけたバスタオルを無意識に引き締め、彼女は警戒心を露わにして藤堂澄人を見つめた。

彼が目を伏せて低く笑い、一歩一歩九条結衣に近づき、シャワールームのガラスドアに彼女を押し付けた。

「シャワー終わった?」

彼は声を落として、彼女の美しい鎖骨に視線を這わせた。

九条結衣がバスタオルをしっかりと握り締め、泥棒でも見るかのような警戒した目つきで見ているのを見て、彼の目の中の笑みはさらに深くなった。

「結衣、少し後悔してるんだ」

彼の指が、彼女のバスタオルを握る手の甲を、からかうように軽く撫でた。九条結衣はくすぐったさを感じた。

「さっきは何も言わずに一緒にシャワーを浴びるべきだったな」

九条結衣の顔は、彼の言葉と仕草に赤くなったり青ざめたりを繰り返した。