600.抗えないほど優しく

夏川雫は九条結衣がこれほど固執するとは思わなかったので、少し困惑していた。

「はいはい、明日行くわ」

九条結衣はようやく満足し、目の前のまだ一杯のお料理を見て、言った。「胃腸の調子が悪いなら、あっさりしたものを食べましょう」

「うん、結衣が私のことを一番考えてくれてるって知ってたわ」

夏川雫は急いでお愛想を言った。

そして、箸を置くと、キラキラした目で彼女を見つめて尋ねた。「本当にあのバカを許したの?」

九条結衣はC市に行ったものの、二人は個人的によく連絡を取り合っていた。九条結衣と藤堂澄人の再婚のことは、九条結衣が早くから夏川雫に話していた。

今、夏川雫に聞かれて、九条結衣は食事の動作を一瞬止め、二秒ほど考えてから言った。

「私も今どう思っているのかわからないわ。最初に彼との再婚を承諾したのは、完全に九条初のためだったけど…でも…」