「私が20歳の時に田中行と出会ったのは、ある論文発表会の時でした。一目惚れして、厚かましくも彼を追いかけ始めたんです」
「後になって分かったことですが、田中行は私たちの法学部のスター的存在で、私が彼を追いかけ始めたことは学部中の噂になってしまい、陰で『蛙の分際で白鳥を狙う』なんて散々皮肉られました」
田中家は国際的にも名が通っており、さらに田中奥様は控えめな性格ではなかったため、田中行が田中家の御曹司であることは多くの人が知っていました。
彼は容姿端麗で、家柄も申し分なく、学歴も高く、大勢のお嬢様たちが彼を待ち望んでいました。当時の私は、この顔以外には彼に釣り合うものなど何一つありませんでした。
「当時は何を考えていたのか、釣り合わないと分かっていても、人に皮肉られるのを聞くと、この短気な性格が抑えられなくて、どうしても彼を手に入れたくて、そして……」