565.藤堂社長のWeChatの名前

九条結衣のLINEの友達は多くなく、普段何かあれば基本的に電話で連絡を取り、LINEはあまり使わなかった。

今、このような友達追加のメッセージを見て開くと、追加者の名前を見た瞬間、彼女のまぶたがピクリと痙攣した。

【結衣の旦那様】

こんな厨二病みたいな名前を付けなくても。

承認した後、プロフィール画像を開くと、そこには彼女が寝ている写真が使われていて、最近撮られたものらしかった。

彼女が寝ているときの枕を見て、九条結衣の顔が一瞬にして暗くなった。

あの夜、彼と...えっと...

疲れて寝てしまった後、ゲストルームに運ばれて撮られたんだろう。

「このバカ野郎!」

彼女は思わず歯ぎしりしながら罵った。

次の瞬間、メッセージが届いた——

【奥さん、会いたいよ。】

九条結衣:「……」

まるで甘えん坊の小悪魔みたい。

彼女はその言葉を完全に無視して、【気を付けて。】とだけ返信した。

【もう行くよ。】

その後ろに「可哀想」なLINEスタンプが付いていた。

九条結衣は思わず笑みを漏らし、「バイバイ」のスタンプを送り返した後は何も言わなかった。

藤堂澄人からもそれ以上メッセージは来なかった。おそらく飛行機が離陸したのだろう。

がらんとした部屋を見つめながら、今の九条結衣は何かが足りないような気がして、静かすぎて少し慣れない感じがした。

ソファーでぼんやりと座っていたが、突然何かを思い出したように、タブレットを手に取り、ツイッターを開いた。

誠和に関するネガティブな投稿は全て削除されていたが、別の投稿がすぐにトレンド入りしていた。

それは九条結衣と宮崎裕司が病院を出た後、山下優とあの騒ぎを起こした作業員たちが病室の前で交わした会話の動画で、九条結衣が病室に入る前に、あらかじめそこで撮影するよう手配していたものだった。

動画は非常に鮮明で、山下優とその作業員たちの表情まではっきりと映っていた。

それだけでなく、山下初流が入院した時、宮崎裕司が直接医療費を支払った証明書や、医師の診断書も数枚掲載されていた。

山下初流は単に足を怪我しただけで、意識不明の重体というほどではなかった。

そしてネット上で話題になっていた、山下初流が高所作業中に転落する直前の動画も公開された。