569.焦りで頭がおかしくなる

彼は知るよしもなかったが、彼のボスは彼以上に焦りまくっていた。

もちろん、今すぐにでもネット上で結衣と正式な夫婦であることを宣言したかったし、全世界に結衣が藤堂澄人の妻であることを知らせたかった。

そうすれば、誰も彼の妻に手を出そうとはしないし、妻もネット上のこのような愚かで無知な言論に傷つくことはないだろう。

しかし今は、結衣との関係について、勝手に決めることはできなかった。もし結衣が二人の関係を公表することに同意しなければ、彼女の機嫌を損ねてしまい、これまでの努力が水の泡になってしまう。

「ツイッターのアカウントを作ってくれ」

「はい、社長」

松本裕司は自分のボスのそんな思慮深い考えを知る由もなく、ボスの望むことを実行するだけだった。

ツイッターのアカウント開設など、松本裕司はすぐに手配を済ませ、ボスが既に本社ビルに向かったのを確認した。