結衣はまだ彼のことを怒っていた。
そう認識したことで、藤堂澄人の気持ちはさらに沈んでいった。
その時、九条結衣は産婦人科の救急室で焦りながら立ち、夏川雫の手を握りしめ、緊張した様子で彼女を慰めていた。
「雫、落ち着いて。私がここにいるから、大丈夫よ」
「結衣さん、患者さんの診察をしますので、一度外へ出てください」
産婦人科の山下部長が追い出し始めた。
九条結衣は今は医師ではなく、自分がここにいることで医師の仕事の邪魔になることも分かっていたので、無理に残ろうとはせず、ただ山下部長に言った:
「部長、私は外で待っていますので、何かありましたらなんでも仰ってください」
そして、顔色の悪い夏川雫に向かって:「雫、怖がらないで。山下部長が助けてくれるから、私は外で待ってるわ」