607.人を怒らせて死なせても賠償なし

木村富子が田中華南の愛人のように頭が良ければ、九条結衣は木村富子と戦うことにやりがいを感じたかもしれない。

上流社会では、部外者たちは白石七海とあの愛人を比較することが多く、白石七海自身もそのことを知っていた。

知っているからこそ、あのピアノを弾く女なんて田中家の正当な奥様である自分には及ばないと思い、自分の品格を上げるために、経済チャンネルにインタビュー料を払って取材を受けていた。

自分の品格が上がったと思っていたが、ビジネス界で本当に目が利く人々が陰で彼女をどう笑っているか知らなかった。

目が利かないくせに見栄を張るなんて！

一方、ネットで専門家を気取るキーボードウォリアーたちは、彼女の言うことにもっともらしさを感じていた。

白石七海は自分のインタビュー後のコメントをよく見ていて、褒められて有頭天になっていた。