「次は気をつけます。奥さんが魅力的すぎて、毎回我慢できなくなってしまうんです」
男の熱い息が九条結衣の耳元で漂い、くすぐったさと共に彼女の感情も揺さぶられていった。
眉間にしわを寄せ、振り向いて彼を睨みつけながら言った。「次はないわよ!」
「はい、次はありません」
藤堂澄人は今は妻の機嫌を取るしかなく、反論する勇気などなかった。
九条結衣は彼が適当に答えているのを知っていたが、彼のこの従順な態度に、逆に怒りようがなくなってしまい、最後には呆れて笑ってしまった。
彼がこうして好き勝手に自分を弄ぶことができるのも、結局は自分が許しているからではないか?
怒る必要なんてないのだ。
藤堂澄人の腕の中で少し横になっていると、今日のショッピングモールでの白石七海の夏川雫に対する露骨な敵意や、夏川雫と田中行との複雑な関係を思い出し、心配になってきた。