654.彼に告げるべきか

九条結衣が藤堂澄人からのメッセージで夏川雫の様子を尋ねられた時、眉をしかめた。

夏川雫の胎児はまだ月数が浅かったため、医師は直接薬物による中絶を行った。

「どうしたの?」

夏川雫は九条結衣が携帯を持って表情を変えるのを見て、尋ねた。

彼女の顔には血の気がほとんどなかった。まだ形になっていない胎児が血の塊となって体内から流れ落ちるのを自分の目で見た彼女の心は締め付けられるように痛んでいた。

しかし九条結衣を心配させないように、強引に笑顔を作り、心の痛みを必死に押し殺していた。

九条結衣が藤堂澄人のメッセージを彼女の前に見せると、夏川雫も眉をしかめた。

「彼に伝えるの?」

聞くまでもなく、二人とも分かっていた。藤堂澄人がこんなに慈悲深く夏川雫の様子を尋ねてくるのは、明らかに誰かに頼まれたからだった。

誰に頼まれたかは、一人しかいないことは明白だった。

夏川雫は体の横で手に力を入れ、それでも首を振って、「必要ないわ。彼に伝えて何になるの?もう別れたのに、私を見舞いに来てほしいとでも思っているの?」

そう言いながら、自嘲的に笑い、九条結衣の手をしっかりと握って言った。「結衣、私のそばにいてくれてありがとう。私は大丈夫よ。田中行のことは...」

ここで一旦言葉を切り、乾いた唇を噛んでから、やっと続けた。

「私、子宮に異常があるって分かったの。これは運命なのかもしれない。この子を失うことで、田中行との最後のつながりも断ち切られたのね。」

「雫...」

夏川雫の骨ばかりの指から伝わる冷たい体温を感じ、九条結衣は思わず心痛めて眉をしかめた。

夏川雫が無理に笑顔を作って首を振り、「大丈夫よ、本当に。心配しないで。」と言った。

今は子供もいなくなり、九条結衣もこれ以上慰めの言葉をかけても意味がないことを知っていた。

そのため、多くを語らず、ただ「体を治すことに専念して。手術は三日後よ。私が付き添うから。」と慰めた。

二人の間の雰囲気があまりに重くなることを避け、さらにその重苦しい雰囲気が夏川雫の気持ちに影響することを避けたかった九条結衣は、深く息を吸って言った。

「私は昔の、誰にでも立ち向かっていく、気の強い夏川雫の方が好きよ。今のあなたみたいに風で倒れそうな姿は、醜いわ。」

「そう?」