654.彼に告げるべきか

九条結衣が藤堂澄人からのメッセージで夏川雫の様子を尋ねられた時、眉をしかめた。

夏川雫の胎児はまだ月数が浅かったため、医師は直接薬物による中絶を行った。

「どうしたの?」

夏川雫は九条結衣が携帯を持って表情を変えるのを見て、尋ねた。

彼女の顔には血の気がほとんどなかった。まだ形になっていない胎児が血の塊となって体内から流れ落ちるのを自分の目で見た彼女の心は締め付けられるように痛んでいた。

しかし九条結衣を心配させないように、強引に笑顔を作り、心の痛みを必死に押し殺していた。

九条結衣が藤堂澄人のメッセージを彼女の前に見せると、夏川雫も眉をしかめた。

「彼に伝えるの?」

聞くまでもなく、二人とも分かっていた。藤堂澄人がこんなに慈悲深く夏川雫の様子を尋ねてくるのは、明らかに誰かに頼まれたからだった。