九条結衣は今、疲れ果てているものの、まだ時間が早いため、少しも眠気を感じていなかった。
藤堂澄人に抱かれながら、本能的に彼の胸元に寄り添い、従順な子猫のように振る舞う彼女の姿に、澄人の心は完全に溶けてしまった。
「妻よ、この二日間のことは、申し訳なかった」
横たわりながら、九条結衣を抱きしめ、彼は再び謝罪の言葉を口にした。
結衣は彼の腕の中で、この期間の二人の関係を思い返した。全てが彼の過ちであろうとなかろうと、彼はいつも進んで謝罪し、和解を求めてきた。
今回もそうだった。彼が怒りと失望を感じていたことは分かっていた。彼女が彼のことを気にかけていないと思い、他の男性と楽しく会話をしているのを見ながら、自分はブラックリストに入れられ、メッセージひとつ返信されなかったのだから。
藤堂澄人のあの高慢で他人を見下すような性格なら、完全に彼女を無視することもできたはずだ。
しかし彼女が帰宅するや否や、最初に聞いたのは息子の口から食べ物を守ってくれたという話で、心の中では不愉快なはずなのに、自ら彼女の手を取ってくれた。
全ての威厳とプライドを下げ、進んで和解を求め、謝罪する彼。彼女には分かっていた。彼は常に彼女の前で最善を尽くし、彼女を満足させようと努力していたのだと。
あの三年間、確かに彼は彼女に対して良くなかった。しかし...一度チャンスを与えたのなら、なぜ彼をこんなにも戦々恐々とさせなければならないのか?
もしこのように常に彼を警戒し、予測できない未来のために意図的に彼の優しさを無視し続けるのなら、それは本当に良いことなのだろうか?
結衣は心の中で自問した。ずっと誰かを警戒しながら人生の後半を過ごすのは、澄人が疲れないとしても、自分が疲れてしまうだろう。
このように考えを巡らせた後、彼女は心の中でため息をついた。
澄人の腕の中から顔を上げ、そっと呼びかけた。「澄人」
「ん?」
彼は顔を下げ、顎を結衣の額に優しく擦り付けた。
「これからは何か考えがあったら、直接私に言って。こんな風に推測し合って誤解が生まれるのは、もう避けたいの」
彼女のこの率直な言葉に、澄人は一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに誠実に頷いた。「分かった」