以前は認めようとしなかったのに、二十年以上経った今になって息子を探しに来るなんて、九条結衣が邪推しているわけではなく、黒崎芳美という女があまりにも厚かましすぎて、疑わずにはいられなかった。その女には別の思惑があるに違いない。
もしその女が自分を利用して藤堂澄人を陥れようとするなら、容赦はしない。
そう言うと、彼女はそのまま立ち去った。
「でも、私の母は澄人兄さんの実の母で、あなたの姑なのよ。その態度はおかしいんじゃない?」
高橋夕の言葉には非難が込められていた。表情は特に柔弱で穏やかに見えたが、それと比べると、むしろ九条結衣の方が人をいじめているように見えた。
おそらく周りにパパラッチがいるので、自分のイメージを保たなければならないのだろう。
しかし九条結衣は違った。今は街角のチンピラのような立場でも、イメージなど気にしなかった。