673.厚かましくも親子の縁を求めに来る

九条結衣は高橋夕の言葉に応じず、唇の端に意味ありげな笑みを浮かべ、意図的に高橋夕を困らせているかのようだった。

高橋夕はようやく自分の不適切な態度に気づいたようで、慌てて笑いながら説明した:

「申し訳ありません。ご存じないかもしれませんが、私の義母は藤堂社長のお母様なので、名目上、私は彼のことを兄さんと呼ばなければなりません。」

このような説明は、彼女の「澄人兄さん」という呼び方以上に、九条結衣には不快で吐き気を催すものだった。

彼女は高橋夕を笑顔で見つめ、その言葉に同意するかのように頷いて言った:

「確かに、いつ高橋奥様が私の義母になったのか知りませんでした。だって、うちの澄人が私に言うには、お母様は彼が六歳の時にすでに亡くなっていたそうですから。」

高橋夕の表情が微かに変わるのを見て、九条結衣は手に持っていた茶碗を置き、ゆっくりと続けた:

「高橋お嬢様、お手数ですが高橋奥様にお伝えください。私の夫に両親がいないからといって、勝手に親を名乗らないでいただきたいと。」

「あなた...」

「それと、親切なアドバイスを一つさせていただきますが、見知らぬ人に対して安易に『兄さん』などと呼ばないでください。血のつながった兄妹でもないのに、そんな風に呼ぶのは、誤解を招きかねません。あなたは公人なのですから、品位を保つべきです。」

高橋夕は九条結衣がこれほど意地の悪い言い方をするとは思っていなかった。一言一言が彼女の顔を踏みつけるようだった。

彼女に会う前は、九条結衣はただの何の取り柄もない金持ちの娘で、藤堂澄人との結婚も運が良かっただけだと思っていた。きっと藤堂澄人の機嫌を取るために、彼の周りの人々にも取り入ろうとするはずだと。

そして黒崎芳美は藤堂澄人の母親だから、つまり彼女の義母なのに、へりくだって取り入ろうとするどころか、このように直接的な皮肉を言うなんて。

九条結衣は高橋夕の面子を立てるつもりは全くなく、席を立って言った:

「他にご用がなければ、これで失礼させていただきます。」

そう言って立ち去ろうとしたところ、高橋夕に呼び止められた。「九条さん。」

高橋夕の呼び方を聞いて、九条結衣は口元を歪めた。さっきまで藤堂奥様と呼んでいたのに、今度は「九条さん」になったのか?