651.女を見たことがないような態度、ふん!

二枚の写真で、彼女は同じように幸せそうに笑っていた。唯一違うのは、隣にいる人物だった。

かつては無表情だった彼が、今は彼女以上に幸せそうに笑っていた。まるで稀少な宝物を見つけた子供のように、笑みを隠すことなく。

九条結衣は彼を見つめ、そして彼の手にある婚姻届を見て、思わず口元が緩んだ。

次の瞬間、藤堂澄人が携帯を取り出し、アルバムから一枚の写真を開いた。その写真を見た時、九条結衣の目尻が思わずピクリと動いた。

その写真は、彼らが初めて結婚した時の婚姻届だった。まさか彼がまだ保存していたとは。

田中行が彼女に詰問した時、藤堂澄人が二人の婚姻届を携帯に保存していると言っていたことを思い出した。当時は全く気にも留めなかったが、それは...本当だったのだ。

これほどの年月、実は、彼の彼女への愛は、おそらく当時の彼女の彼への愛に劣らなかったのだろう。

ただ、存在するはずのない誤解に目を曇らされていただけだった。

九条結衣の心に、ある種の悟りが芽生えた。藤堂澄人がその写真を削除し、今日の婚姻届の写真を新たに携帯に保存するのを見ていた。

彼女の目尻が、再び抑えきれずにピクリと動いた。

手を藤堂澄人に強く握られ、掌の中に包まれている。彼が顔を下げ、深い愛情と喜びに満ちた目で自分を見つめながら、真剣な表情で言った:

「九条さん、今日からあなたは再び俺の妻になった。これからは、誰も俺からあなたを奪うことはできない。そして、あなたも勝手に俺を捨てることはできないよ。」

彼のそんな真剣な様子を見て、九条結衣は思わず呆れたように白い目を向け、その場を立ち去ろうとした。

しかし藤堂澄人は許さず、彼女の手をしっかりと握ったまま、その場に立ち止まり、確実な答えを得るまでは諦めないという様子で、「聞いてるか?」と尋ねた。

「聞いてるわよ!」

九条結衣は仕方なく笑みを浮かべ、ようやく満足した様子の夫と共に車に乗り込み、区役所を後にした。

途中、第一総合病院を通りかかった時、彼女は藤堂澄人に車を止めてもらい、病院の隣にある栄養食レストランで夏川雫の朝食を買った。振り返ると、彼が背後に立っているのが見えた。

九条結衣は眉をひそめ、「どうしてまた戻ってきたの?」

「一緒に行こうと思って。」