688.浜辺のあの人影

彼女は手を上げて、彼の顔を押しのけ、ゆっくりと起き上がって座った。「私、どのくらい寝てたの?」

「そんなに長くないよ。お腹すいてない?何か作っておいたんだけど」

九条結衣は首を振り、ベッドから降りて、バスルームで身支度を整えて出てきた。

寝室は別荘の外に面しており、とても大きな床から天井までの窓が一面の壁を占めていた。

外からは中が見えないが、中にいる人間は外をはっきりと見ることができた。

砂浜にはまだ多くの観光客がおり、海の真ん中には人工の島があり、百人以上が釣りを楽しめるようになっていた。

青い海水は底まで透き通っており、白い細かい砂と相まって、海と空が一体となった美しい景色を作り出し、人々の心を魅了していた。

「私たちも外に出ましょう」

九条結衣は少し興奮気味だった。