九条結衣は、この黒崎芳美がゴキブリのように生命力の強い人間だと気づいた。どんなに言い返しても、厚かましく聞こえないふりをするのだ。
九条結衣を見ると、黒崎芳美の表情は良くなかったが、自分の息子がここにいることを考慮して、この生意気な女を軽々しく挑発することはできなかった。
傲慢に顎を上げて九条結衣に向かって、「澄人は?」
「いません」
九条結衣は面倒くさそうに答えて、外に向かって歩き出した。
黒崎芳美は再び九条結衣の態度に激怒し、顔が歪んだ。
「九条結衣、私は何度も我慢してきたけど、調子に乗るのはやめなさい。本当に自分を大物だと思い込んでいるの?私の息子が甘やかしているから調子に乗っているだけでしょう。彼がいなければ、何も誇れることなんてないじゃない?」
九条結衣は黒崎芳美の思考回路にまた笑わされた。
「そうですね。私には藤堂澄人が甘やかしてくれていますが、あなたにはいません。今ここで何をしているんですか?恥をかくのが分かっているのに、わざわざ私に辱められに来るなんて、どうしてそんなに下劣なんですか?」
「あなた...九条結衣!!」
九条結衣の口の悪さは知っていたものの、黒崎芳美は姑である自分に対してますます酷い言葉を使うとは思っていなかった。「下劣」という言葉まで出てきたのだ。
「ふん!私という姑を本当に眼中に入れていないようね」
黒崎芳美は冷たい目で九条結衣を見つめ、冷笑した。
「ずっと前からお分かりだと思っていましたけど」
九条結衣は極めて率直に黒崎芳美の言葉を認めた。
黒崎芳美は彼女のこの何も恐れない態度にまた歯がみしそうになった。
「九条結衣、私は藤堂澄人の実の母親よ。本当に私があなたに何もできないと思っているの?」
「はい、じゃあ今からあなたが私にどうするのか、楽しみに待っていますよ」
九条結衣は無関心そうに手を広げて、「そんなに自信があるなら、どうして今まで彼と話すことさえこんなに難しいんですか」
「あなた...」
黒崎芳美は九条結衣に怒りで体を震わせた。
「お母さん」
そのとき、黒崎芳美の後ろから柔らかい声が聞こえた。
九条結衣は目を細めて黒崎芳美の後ろを見ると、高橋夕が白いビーチマキシワンピースを着て、セクシーな鎖骨を露出していた。