九条結衣は、この黒崎芳美がゴキブリのように生命力の強い人間だと気づいた。どんなに言い返しても、厚かましく聞こえないふりをするのだ。
九条結衣を見ると、黒崎芳美の表情は良くなかったが、自分の息子がここにいることを考慮して、この生意気な女を軽々しく挑発することはできなかった。
傲慢に顎を上げて九条結衣に向かって、「澄人は?」
「いません」
九条結衣は面倒くさそうに答えて、外に向かって歩き出した。
黒崎芳美は再び九条結衣の態度に激怒し、顔が歪んだ。
「九条結衣、私は何度も我慢してきたけど、調子に乗るのはやめなさい。本当に自分を大物だと思い込んでいるの?私の息子が甘やかしているから調子に乗っているだけでしょう。彼がいなければ、何も誇れることなんてないじゃない?」
九条結衣は黒崎芳美の思考回路にまた笑わされた。