737.心の負担を持たないで

「ただの焼き鳥だよ。気にすることはないよ。どっちにしても、私たちは同じ旅行者なんだから、手伝って焼いて食べるのに、特別な意味なんてないよ。」

田中行がそこまで言うと、夏川雫がこれ以上断るのは気取りすぎに見えてしまうだろう。

それに、この香ばしい匂いに我慢できなくなっていた雫は、田中行の言葉が終わるや否や、すぐに手を伸ばしてイカの串を一本取り、口元へ運んだ。

その味は彼女の味覚を一瞬で虜にし、彼女の目が急に輝いた。

田中行はその見慣れた表情を見て、唇の端がわずかに上がった。

相変わらず食いしん坊だな。

次の瞬間、夏川雫の目が突然暗くなるのを見た。まだ食べ続けてはいたものの、先ほどの目の中の一瞬の輝きは明らかに消えていた。

田中行は彼女が何を考えているのか分からなかった。たとえ彼が心の底から彼女の今の気持ちを理解したいと思っても、彼女が既に冷酷にも彼を心の扉の外に閉め出してしまったことを知っていた。

夏川雫の顔をあまり長く見つめることなく、「ゆっくり食べて」という一言を残して、再び焼き台の前に戻った。

夏川雫の手には、まだ食べ終わっていないイカの串があり、目の前にはたくさんの串が盛られた皿があった。

懐かしい味が、心を刺すような思い出とともに、夏川雫の目を突然熱くさせ、元々の美味しさも今では蝋を噛むようだった。

口の中の食べ物を一生懸命噛んでいたが、喉には大きな石が詰まっているかのようで、どんなに細かく噛んでも飲み込めなかった。

彼女は目を伏せ、口の中の味が、田中行との4年間の思い出を次々と呼び起こした。

彼女が焼き物を好きだったから、外の食材が不衛生なことを心配して、よく家で自分で作って食べさせてくれていた。

その素晴らしくも心を刺すような思い出に、夏川雫の目の中の涙がいつでも溢れ出しそうだった。

九条結衣は夏川雫の突然の沈黙に気付き、彼女の前に置かれた山盛りのイカの串を見て、心の中でため息をついた。

しばらくして、夏川雫は手の中の竹串と残りの大皿を置いて、九条結衣に言った:

「ちょっと眠くなったから、別荘に戻って寝るわ。みんなゆっくり楽しんでね。」

そう言って、彼女は別荘の方へ歩き出した。九条結衣は彼女を引き止めなかった。今の彼女の心境がきっと辛いものだと分かっていたから。