「ただの焼き鳥だよ。気にすることはないよ。どっちにしても、私たちは同じ旅行者なんだから、手伝って焼いて食べるのに、特別な意味なんてないよ。」
田中行がそこまで言うと、夏川雫がこれ以上断るのは気取りすぎに見えてしまうだろう。
それに、この香ばしい匂いに我慢できなくなっていた雫は、田中行の言葉が終わるや否や、すぐに手を伸ばしてイカの串を一本取り、口元へ運んだ。
その味は彼女の味覚を一瞬で虜にし、彼女の目が急に輝いた。
田中行はその見慣れた表情を見て、唇の端がわずかに上がった。
相変わらず食いしん坊だな。
次の瞬間、夏川雫の目が突然暗くなるのを見た。まだ食べ続けてはいたものの、先ほどの目の中の一瞬の輝きは明らかに消えていた。
田中行は彼女が何を考えているのか分からなかった。たとえ彼が心の底から彼女の今の気持ちを理解したいと思っても、彼女が既に冷酷にも彼を心の扉の外に閉め出してしまったことを知っていた。