738.私のことを常に想っている

「彼女に持って行ってあげて。彼女はこういうのが好きだから」

漂ってくる香ばしい匂いに、九条結衣の瞳が、さりげなく輝いた。

以前は油っこいと嫌がっていた焼き鳥が、今日は簡単に食欲をそそられてしまう。

手を伸ばして皿を受け取ると、田中行がさらに一言付け加えた。「彼女の分を取って食べないでよ」

彼女がさっき、この皿の料理を独り占めしたいような輝く目をしていたのを、見逃していなかったのだ。

九条結衣:「……」

この田中行は彼女の旦那に感化されて、けちで細かくなってしまった。

「じゃあ自分で持って行けよ。なんで俺の嫁が使い走りして、報酬もらえないんだ」

妻を溺愛する男がすぐに近づいてきて、冷たい目で田中行を見つめた。

田中行:「……」

藤堂澄人は田中行の目に浮かぶ軽蔑を無視して、結衣の方を向いて言った: