藤堂澄人が自分のために、こんなに深い傷も気にせず、長い道のりを歩いて、青ざめた顔で自分の前に立っていたことを思い出すと、胸が痛くてたまらなかった。
藤堂澄人は、奥さんがそのことで泣いていたと聞いて、可笑しくもあり、心配でもあり、そして何より嬉しかった。
「大丈夫だよ。あの時は応急処置をしていたし、君が黒崎芳美とあそこで時間を無駄にしていなくても、彼女を簡単には許さなかったさ。彼女が恥をかきたいなら、世界中に知らしめて、その願いを叶えてあげないとね」
彼は九条結衣の背中を優しく叩きながら、額にキスをして言った。「もう自分を責めないで。傷は深く見えるけど、実際はたいしたことないんだ……」
「じゃあ、どうして私に教えてくれなかったの?」
藤堂澄人の言葉は、奥さんの不満げな声で遮られた。