792.大逆転

「きっと、あのプレイボーイがまた本性を現して藤堂奥様に手を出そうとしたから、藤堂奥様に殴られたんでしょう。ふん!大胆すぎる、藤堂社長に足を折られても構わないのかしら」

「上の人、もしかしたら彼の第三の足はすでに藤堂社長に折られたから、おとなしく出てきて釈明したのかもね」

……

すぐに、新人女優賞受賞者と藤堂社長のスキャンダル、藤堂奥様が新人女優と会談したという投稿は沈静化し、代わりに三流女優の河内欣が女優賞の座を奪うために悪意を持って陥れたという非難の声が瞬く間に芸能界全体に広がった。

高橋夕の熱心なファンと傍観者たちから散々な罵倒を浴びせられた。

今回、藤堂澄人が出手したのは、自分の妻が余計なごたごたに巻き込まれるのを避けたかったからだが、間接的に高橋夕を助けることにもなった。

河内欣は無名女優とはいえ、多くの人が密かに彼女の後ろ盾は小さくないと噂していて、簡単に調べられる相手ではなかった。

このように一撃で河内欣を徹底的に叩きのめし、振込記録やチャット履歴といったプライバシーまで暴露できる人物の力は、当然小さくない。

今回のスキャンダルの主役である藤堂澄人、藤堂奥様、女優賞受賞者の高橋夕、この三人の中で、農村出身の高橋夕にはそのような力はないはずだ。

となると、藤堂澄人と藤堂奥様しか残らない。

人々は以前、藤堂澄人が自分の妻を擁護するためにツイッターを開設した輝かしい出来事を思い出し、今回のような素早く的確な対応は間違いなく藤堂澄人の仕業だと確信した。

「私が言ったでしょう、私の夕が第三者になるはずがないって。正しい価値観を持つ"面食い"として、がっかりして応援をやめそうになったわ。私の夕は素晴らしい、面食いは永遠に愛してるわ」

「あの河内欣って本当にろくでもないわね、安っぽい女。実力がないものはないもの。金持ちの男に引っかかったからって安心してたのに、私たちの夕を陥れるなんて下劣よ。このクズ女、芸能界から出ていけ」

「夕の価値観は私たちと同じように正しいの。他人の略奪愛なんてする下劣な真似はしないわ。河内欣のクズ女のせいで私たち面食いは怖い思いをしたわ」

「私の夕がかわいそう。人気者は大変ね」

「かわいそう。私の夕は最高よ」

……