おばあさまは理不尽な人ではなく、伝統的な考えに縛られた人でもなかった。
孫の言う道理は全て分かっていた。ただ、植田涼が自ら瞳と離婚を切り出したと聞いた時、驚きと同時に少し残念な気持ちにもなった。
「域は本当に瞳と離婚するのかしら?」
おばあさまは一縷の望みを抱きながら尋ねた。
藤堂澄人の表情が厳しくなるのを見て、「おばあさま、域は十分よくやってきました。他の男性だったら、今日まで我慢できなかったでしょう」
「彼が瞳をどう扱ってきたか、私たちは見てきました。彼が優しいからといって、藤堂瞳に迷惑をかけ続けさせるわけにはいきません」
藤堂澄人は真剣な表情で話し、藤堂瞳が実の妹だからといって言葉を和らげることはなかった。
「域が藤堂瞳と離婚するかどうかは、域個人の決定です。私たちは関与すべきではありません」
「それに……」
ここまで言って、藤堂澄人の目が冷たくなった。「彼女が以前、結衣をいじめていた件については、まだ清算していない」
九条結衣:「……」
なぜ突然、自分の話を持ち出すのだろう?
おばあさまも最後には諦めて、ただ無力に手を振った。「もういいわ、瞳の運命次第よ。私たちにできることはやった。もう彼女の話はやめましょう。食事にしましょう」
夕食後、おばあさまは部屋に戻って休んだ。
九条結衣も最後には藤堂澄人と一緒に部屋に戻った。部屋に入るなり、藤堂澄人に抱きしめられ、耳元で低い謝罪の声が聞こえた。
「結衣、ごめん」
「えっ?」
九条結衣は顔を上げて彼を見た。「急に何を謝るの?何か後ろめたいことでもしたの?」
せっかく醸し出された雰囲気も、九条結衣のこの不気味な質問で吹き飛んでしまった。
彼は苦笑いしながら、手を上げて軽く彼女の鼻筋をつついた。
「さっき藤堂瞳の話が出て、私たちのあの三年間の結婚生活を思い出したんだ」
彼は九条結衣を再び自分の腕の中に引き寄せ、本能的に力を込めた。失って取り戻した感覚が、この瞬間特に強く感じられた。
「僕が黙認していなければ、彼女にそんなに君をいじめる勇気はなかったはずだ」
この言葉は、藤堂澄人が以前にも一度彼女に言ったことがあった。実際、過去のことについて言えば、九条結衣は本当に気にしていた。