「お爺さん、叔母様」
九条結衣は急いで挨拶に行き、藤堂澄人もすぐに続いて、一緒に挨拶をした。
「ひいお爺さん、叔母様」
初の甘い声に、九条爺さんは声を立てて笑った。
すぐに、お爺さんは小林お爺さんに直々に迎え入れられた。
九条結衣が信じられなかったのは、九条政がしばらくして来ただけでなく、木村富子というその愛人も連れてきたことだった。
木村富子を愛人と呼ぶのは、九条政が彼女との結婚式を挙げようとしていたものの、途中で次々と問題が起き、九条政を困らせ、結婚式が延期に延期を重ねていたからだ。
九条政が木村富子を連れて小林お爺さんの誕生日祝いに出席するのを見て、彼を知る多くの人々が、指を指して噂し合っていた。
この九条政のやり方は本当に筋が通らない。前の義父の誕生日祝いに愛人を連れてくるなんて、これは故意に前の義父を困らせるつもりか、それとも前妻を困らせるつもりなのか。
本当に、どこに行っても恥をさらすばかりだ。
九条結衣は九条政と木村富子を見て、それまで浮かべていた笑顔が一瞬にして凍りついた。
この九条政は、本当に反省の色がない。彼を放っておきすぎたのか、また暇を持て余して、こんな騒動を起こし、外祖父の誕生日祝いで笑い者になるようなことをしでかすなんて。
九条愛も九条政と木村富子を見かけ、目を細めて何気なく九条爺さんの耳元に身を寄せ、小声で言った:
「お父様、お兄さんが来ました」
九条爺さんは九条愛のこの言いようのない表情を見て、あのろくでなしがまた何か恥ずかしいことをしでかしたに違いないと察した。
案の定、九条愛の視線の先を見ると、九条政と腕を組んで入ってきた木村富子の姿があり、九条爺さんの表情は一瞬にして曇った。
「このバカ者め!本当に誰でも連れてくるとは」
彼は顔を曇らせて立ち上がろうとしたが、傍らの小林お爺さんに止められた。
九条政があの愛人を連れて入ってきた時、彼はすでに気付いていた。放っておいたのは、一つには今日が自分の誕生日で、周りは祝いに来た客ばかりだから、場を荒らすわけにはいかなかったからだ。
もう一つは、娘は九条政とすでに離婚しており、彼が誰を連れてこようと、前の義父として彼を咎める資格はないからだ。
そうでなければ、かえって九条政に自分の娘がまだ彼を忘れられず、離婚後も執着しているように思われかねない。