820.彼の紳士的な態度は妻だけのもの

悪い女……

この三文字は、語気を変えるだけで、雰囲気が全く違ってくる。

高橋夕はそのことを考えると、心の中で密かに興奮し始め、大胆さも増してきた。先ほどの藤堂澄人が彼女を見た時の冷たく恐ろしい眼差しなど、すっかり忘れてしまったかのようだった。

藤堂澄人は思考を切り上げ、息子のためにロボットの腕を取り付けようとブロックを手に取ったところで、高橋夕の厚かましい声が再び響いた。「澄人さん……」

今度は呼び方まで変えてきた。それを聞いた藤堂澄人は、手に持っていたブロックをマットの上に投げ捨て、毛布の上から立ち上がった。

高橋夕は再び藤堂澄人の目の奥に燃え上がる冷たさと嫌悪感を目にした。優しさも、寵愛も、どんなに探しても、かけらも見つけることはできなかった。

「高橋お嬢様は自分のことを何か勘違いしているのではないですか?」

藤堂澄人の冷たい声には、隠すことのない軽蔑と嫌悪が混ざっており、高橋夕の心臓が軽く震えた。

「私とあなたは親しい間柄ではありません。そのような呼び方は、親密さや曖昧さを感じさせるどころか、あなたの厚かましさと品位のなさを示すだけです。」

「私は……」

「それに、私の周りには女性が不足していませんし、あなたより美しい女性も大勢います。あなたのような容姿で私の目に留まると思うなんて、自意識過剰すぎるのではないでしょうか。」

彼女が恥も外聞もなくなったのなら、藤堂澄人も彼女に対して礼儀正しく接する必要はなかった。

彼の紳士的な態度は、妻一人のためだけのものだった。

高橋夕は藤堂澄人がここまで率直に話すとは思っていなかった。彼の言葉の一つ一つが、彼女の捨て身で投げ出した面子を踏みにじるものだった。

彼女の顔から血の気が引き、藤堂澄人に会うために特別にスタイリストに頼んで施した精巧なメイクも、藤堂澄人に打ちのめされた後の彼女の顔の蒼白さを隠しきれなかった。

「それと、もし妻があの日あなたに言ったことを覚えていないのなら、もう一度言いましょう。あなたは単なる安物で、艶やかでもないので、私の目には留まりません。」

「もしまだ私の言い方が直接的でないと思うなら、島でのあなたの輝かしい功績について話し合いましょうか?」