820.彼の紳士的な態度は妻だけのもの

悪い女……

この三文字は、語気を変えるだけで、雰囲気が全く違ってくる。

高橋夕はそのことを考えると、心の中で密かに興奮し始め、大胆さも増してきた。先ほどの藤堂澄人が彼女を見た時の冷たく恐ろしい眼差しなど、すっかり忘れてしまったかのようだった。

藤堂澄人は思考を切り上げ、息子のためにロボットの腕を取り付けようとブロックを手に取ったところで、高橋夕の厚かましい声が再び響いた。「澄人さん……」

今度は呼び方まで変えてきた。それを聞いた藤堂澄人は、手に持っていたブロックをマットの上に投げ捨て、毛布の上から立ち上がった。

高橋夕は再び藤堂澄人の目の奥に燃え上がる冷たさと嫌悪感を目にした。優しさも、寵愛も、どんなに探しても、かけらも見つけることはできなかった。

「高橋お嬢様は自分のことを何か勘違いしているのではないですか?」