すると黒崎芳美は福田博士が竜野健二の端渓硯を鑑定し終えた後、突然理解した。
あの厄介者が200円の偽物の徽宗時代の端渓硯を本物と偽って、頭がどうかしているのか?
見栄を張るにしても、あまりにも頭が悪すぎるだろう?
龍閣がこれを売っているのを知っていながら、偽物を買って龍閣に対抗しようとするなんて。
まあ、偽物を買うのはいいとして、さらに知識を披露しようとして、宋の徽宗が瘦金体を創作した時に使用したものだと言い出すなんて。
これは明らかに自分の退路を全て断ち切ってしまったではないか?
今になって愚かにも実際の金額まで口走るなんて、この厄介者にはまだ頭があるのか?
今となっては、彼女の父親が助け舟を出そうとしても無理だろう。高橋さんまで巻き込んでしまうことになる。
黒崎芳美は考えれば考えるほど腹が立った。この厄介者が公の場で恥をかこうが、どれだけ大恥をかこうが、彼女にとってはどうでもよく、むしろ完全に面目を失ってくれた方がいいくらいだった。