849.なぜ彼女を虐めるのか

そのため、この時の高橋洵の心の中がどれほど不満であっても、その怒りを必死に抑え込むしかなかった。

そして、ずっと傍らで竜野健二が高橋家の女性たちを言い負かすのを静かに見ていた九条結衣は、この時、高橋洵と高橋夕の顔が便秘でもしたかのように真っ赤になっているのを見て、思わず口元を緩めた。

先ほどまで竜野健二が彼女に対して抱いていた理由のない敵意も、この瞬間に釣り合いが取れた気がした。

高橋家の父娘のような厚かましい連中には、竜野健二のような誰の顔色も伺わず、自分の気の向くままに振る舞う人物が一番効果的だ。

この父娘は厚かましく、ダブルスタンダードで、自分たちは他人が偽物を売っていると言えるのに、相手が反論すると途端に攻撃的で容赦ないと非難する。

まるで世界中が彼らを中心に回るべきだとでも思っているかのような、厚かましさだ。