九条結衣は彼が黙っているのを見て、明るく笑いながら彼の胸に飛び込んで、なだめるように言った。「もういいの。石川教授のいいところは、私が口で褒めるだけで十分よ。それを心に留めておけるかどうかは、ママの問題だわ。私はあなたを心に留めておけばいいの」
九条結衣のこの甘い言葉は、確かに藤堂澄人の機嫌を取ることに成功した。彼の沈んでいた表情が、瞬く間に晴れやかになっていくのが見えた。
妻が彼の誕生日を覚えていなかったことさえ、もう全く気にならなくなっていた。
宴会は一時間後に終わり、客たちも次々と別れを告げて帰っていった。
九条爺さんも九条愛に支えられながら出ていった。
「九条、今夜はここに泊まっていけば、明日帰ってもいいじゃないか」
小林お爺さんが引き止めるように言った。