特に、九条政のやつが木村富子を連れてきたのは、連れてきただけでなく、バカみたいにいろいろな失態を演じて、お爺さんはきっと小林家の人たちに会わせる顔がないと感じているはずだ。
そう思いながら、九条結衣の視線が九条政と木村富子の顔に向けられ、その目に宿る冷酷さに、木村富子は再び震え上がった。
「いや、結衣、お爺さんはまだ用事があって戻らなければならないから、お前たちはここに数日滞在して、外祖父たちと過ごしなさい」
九条爺さんは気分が優れず、歩き出そうとした。
「お父さん」
その時、後ろから小林静香の声が聞こえた。
振り返ると、小林静香が急いで近づいてきていた。
先ほどかなりお酒を飲んでいたため、小林静香はまだ少し酔っていて、本来は二階に休みに行くつもりだったが、実の父に呼び止められ、お爺さんとよく話し合うように言われた。
そのため、彼女は急いで顔を洗い、水滴を拭う暇もなく駆け下りてきた。
結局、約30年も「お父さん」と呼んできたので、先ほど小林静香が追いかけてきた時も、その呼び方は変わらなかった。
九条結衣は、小林静香の後ろについてきた石川誠の表情が明らかに一瞬固まったのを見て、突然心配になった。
母が九条政に対してまだ何か思いを残しているのではないかと誤解されることを恐れた。
九条政と言えば、九条結衣は思わず彼の方を見やると、彼の目が小林静香の顔に輝くように注がれ、かすかな執着を帯びているのが見えた。
九条結衣の眉が急に寄せられた。
この男が実の父親だとしても、彼が母親を視線で犯しているような既視感を覚えた。
九条結衣は何気なく前に出て、彼の小林静香への視線を遮り、ついでに嫌悪の眼差しを投げかけた。
九条政は一瞬たじろぎ、娘の視線に心虚くなったのか、咳払いをして慌てて目を逸らした。
そして彼の隣にいる木村富子は、最初九条政に理由もなく嫌われたことで気分を害していたが、今は九条政に注目していたため、小林静香が現れた時の彼の目の輝きも見逃さなかった。
特に小林静香がお爺さんを「お父さん」と呼んだ時、九条政の目に心を揺さぶられるような輝きが宿るのをはっきりと見た。
木村富子の心臓が激しく跳ね、不安が胸をよぎった。
もしかして政さんは突然元妻がこんなに魅力的だと感じ、離婚したことを後悔し始めたのだろうか。