藤堂澄人は元々嫉妬していたが、妻の言葉を聞いて協力的に見てみると、夫婦二人の顔には濃厚な興味が浮かんでいた。
石川誠は数学者で、論理的思考が強く、性格も落ち着いていて、感情を隠すのが上手かったが、この時、藤堂澄人もこの石川教授が確かに時々自分の義母を見ていることに気付いた。
唇の端に淡い笑みを浮かべ、義母が彼に話しかけるたびに、彼は優雅に微笑んで頷いていた。
九条政と比べると、この石川教授の方が義母と相性が良さそうだった。
藤堂澄人は心の中でそう思った。明らかに妻は石川教授と義母のことを気にかけているようで、彼ももちろん妻の味方をするつもりだったが——
彼は突然、重要な問題を思いついた——
「石川教授は独身なの?」
石川誠は40代前半くらいに見えた。この年齢は、この時代では大きいとは言えないが、小さいとも言えず、結婚している可能性は高かった。
もし既婚者なら、義母が関わることは彼女の評判に大きな影響を与えかねない。
それに、妻は浮気が大嫌いで、自分の母親が浮気相手になることは絶対に許さないだろう。
「いいえ、石川教授はまだ結婚していないわ」
九条結衣は藤堂澄人の言葉の意図を察し、声を低めて答えた。
「石川教授は母より2歳年下で、今も独身よ。おじいちゃんが何人か女性を紹介したけど、全部断ったみたい」
義母より2歳年下?
それなら44歳か。そんなに年は離れていない。
石川教授が独身だと聞いて、藤堂澄人は安心した。
義母が石川教授と付き合うことになれば、かなり良い話だ。
少なくとも、石川教授は九条政というバカよりずっと信頼できそうだ。
彼は目を細めて妻を見た。珍しく妻が興味津々な様子で、目の中の輝きがあまりにも明らかだった。
彼は小さく笑って冗談めかして言った。「なんだか石川教授は義母のために今まで独身でいたような気がするんだけど」
九条結衣はそれを聞いて目を輝かせ、急いで彼の方を向いた。「あなたもそう思う?」
周りの人々は、この夫婦が頭を寄せ合って何かを話している様子を見て、食事中でも甘い雰囲気を振りまいているのだと思い、見れば見るほど歯がゆく感じていた。二人が年長者のことを噂していることなど、誰も知る由もなかった。