「男に『できるのか』なんて聞くのは危険だって分かってる?」
「どうして?」
九条結衣は分かっていながら聞き返した。
そう言った途端、腰に回された腕の力が強まり、耳元で藤堂澄人の声が響いた。「なぜなら、お前の男はいつでもできるかどうか証明したくなるからだ」
言い終わるや否や、結衣は彼に抱えられて洗面所へと連れて行かれた。
10分後、結衣は鏡に映る新しいヘアスタイルを見つめていた。この腕前は美容室のトニー先生にも引けを取らないほどで、結衣の驚きは隠しようもなかった。
鏡越しに振り返って目の前に立つ男を見つめ、信じられない様子で言った。「美容師に転職するつもり?」
藤堂澄人は彼女の冗談に気を悪くすることもなく、ただ彼女の腰に両手を回して言った。
「お前が娘を産むって約束してくれてから、ネットで女の子のヘアアレンジの講座を全部勉強したんだ。将来うちの娘をかわいく着飾ってやるためにな」