859.取るに足らない道化者

周りの見物人たちは、この一家にすっかり呆れ果てていた。他の人なら、端渓硯が偽物だと判明した時点で立ち去っているはずなのに、わざわざ自ら恥をかきに来るとは。

こんな大恥をかいた高橋さんは、しばらくの間、人前に顔を出せないだろう。

幸い高橋洵はまだ体面を保っており、この状況では居られるはずもなく、小林静香を指差して「人を侮り過ぎる」と罵って立ち去った。

高橋洵が去ったので、黒崎芳美と高橋夕も居づらくなり、この機会に追いかけて出て行った——

「高橋!」

「お父さん!」

「……」

この一家が去って、誕生会はようやくすがすがしい雰囲気になった。

この二つの大笑い話のおかげで、宴会が始まるまでの待ち時間も全く退屈ではなかった。

木村富子はこのような結果になるとは思わず、失望すると同時に、少し気まずく感じ、小林静香が怒りを自分に向けるのではないかと恐れていた。

彼女は小林静香と付き合いがなく、高橋夕と同じような認識で、小林静香を美貌だけの無知な女性だと思っていたが、まさかこれほど強い女性だとは思わなかった。

高橋洵のような名声のある一流の音楽家でさえこのように弄ばれるのだから、誰からも嫌われ、誰をも見下すような愛人の自分は、どんな風に皮肉られるか分からない。

これからは、九条政と結婚してセレブ妻の仲間入りをしても、前妻にやり込められた過去は必ず話題に上がるだろう。

この時、木村富子は非常に賢明に事を荒立てないようにし、むしろ九条政の背後に隠れるように下がり、小林静香に見つからないことを願った。

案の定、次の瞬間、小林静香の視線が彼女の顔に止まり、彼女は心臓が激しく震え、思わず九条政の服の裾を掴み、小林静香が自分を攻撃するのではないかと恐れた。

しかし、彼女は自分の小林静香の目の中での存在感を完全に過大評価していた。小林静香の視線は彼女の顔に半秒とどまっただけで、突然意味深に口角を上げ、すぐに視線を外した。

このような意味のない道化師に、一秒でも時間を無駄にすることに罪悪感を覚えるほどだった。

九条結衣は初めて母親のこんなに強い姿を見て、新鮮に感じ、目の中にも興味深そうな光が浮かんだ。

耳元で、藤堂澄人の低い笑い声が聞こえた。「以前は君の性格が叔母さんに似ていると思っていたけど、今見ると、お義母さんも負けていないね。」