「妊娠したぐらいで、大げさすぎるわ」
藤堂澄人はこの言葉を聞くと、すぐに妻を労わって、彼女を抱き上げてベッドの方へ向かった。
九条結衣:「……」
この数歩の距離ぐらいで抱っこされるほど疲れてないのに。
なんてオーバーなの。
心の中ではそう思いながらも、九条結衣は素直に夫に抱かれてベッドに横たわった。
「妊娠したんだから、ゆっくり休まないと。夜更かしもダメだし、普段も無理しちゃいけない。帰ったら、松本裕司に全ての書類を家に持ってこさせるから、俺が家で付き添うよ」
九条結衣:「……」
ただの妊娠なのに、そこまで大げさにする必要ないでしょ?
「必要ないわ、そんなに大げさにしないで」
九条結衣は心の中の言葉をそのまま口にした。
「俺の妻が妊娠したんだから、大げさにしてなぜいけない?」
藤堂澄人は当然のような顔をした。
「他の人の奥さんなんて、出産間近でも働いてるわよ」
「お前は他人の妻じゃない、俺の妻だ。他の奥さんが七、八ヶ月でも働いてるのは、旦那が無能で妻を甘やかす余裕がないからだ」
九条結衣:「……」
もう何も言うことがなかった。
「寝るわよ!」
「はい、妻の言うとおりに」
今は妻が一番大事で、妻を怒らせるようなことは何もできない。
藤堂澄人は九条結衣の隣に横たわり、幸せそうな表情で彼女を抱きしめ、目を閉じた。
しかし、しばらくしても、九条結衣は隣の人が全く眠る気配がないのを感じた。時々低い馬鹿笑いを漏らし、また時々彼女のお腹に手を当てたままだった。
九条結衣:「……」
何度もこんな状態が続いた後、九条結衣はついに我慢できなくなった。「藤堂澄人、いい加減にして。ただの妊娠よ、そこまで大げさにする?」
「大げさじゃない……」
藤堂澄人は妻に逆らう勇気がなく、まるで女々しい男のように、申し訳なさそうに小声で言った。
「早く寝なさい!」
「はい」
彼は素直に返事をして、大人しく彼女の隣に横たわった。
しかし、十分も経たないうちに、九条結衣は隣の人がまた馬鹿みたいにニヤニヤし始めるのを感じた。
でも妻様の邪魔をするのを恐れて、必死にその笑い声を抑えていた。
九条結衣:「……」
このバカ。