878.藤堂澄人という精神病

なぜ彼は藤堂澄人の声を聞いたのか。

彼の奥さんが妊娠したことなんて、自分に何の関係があるんだ。真夜中に電話なんかしてくるなよ。

確認するかのように、彼は携帯を耳から離し、画面を見ると、確かに藤堂澄人からの電話だった。

九条結衣は目の前のこのバカが他人を困らせ続けるのを見て呆れた。北条春生が藤堂澄人に起こされて、こんな意味不明な電話を受けた時の表情が想像できた。

藤堂澄人だからこそ許されることで、他の誰かだったら、とっくに足を折られていただろう。

「こぶたに伝えてくれ。彼の嫁が決まったってな」

九条結衣：「……」

電話の向こうの北条春生：「……」

言い終わると、藤堂澄人は電話を切った。切る直前、九条結衣は電話の向こうから北条春生の怒りの咆哮を聞いた——

「藤堂澄人、お前キチガイか！」

北条春生のその叫び声で、隣で寝ていた奥さんが目を覚ました。

こぶたの母は朦朧と目を開け、夫が携帯を持って顔を真っ黒にして、イライラした様子を見て思わず尋ねた：「どうしたの？誰からの電話？」

「藤堂澄人っていうキチガイからだ！」

北条春生は携帯を脇に投げ捨て、「自分の奥さんが妊娠したから、うちの息子に伝えてくれって。息子の嫁が決まったってさ」

こぶたの母：「……」

確かにキチガイだ。深夜1時過ぎにわざわざこんなことを電話してくるなんて、寝ないのか？

藤堂澄人は北条春生に電話をかけ終わると、満足げにベッドに戻り、奥さんを抱きしめて横になった。

彼女が藤堂澄人に妊娠を告げてから今まで、もう1時間以上経っている。九条結衣はこのバカにうんざりしていた。北条春生が彼をキチガイと呼ぶのも無理はない。

「もし男の子だったら、こぶたと付き合わせるつもり？」

藤堂澄人：「……」

「結衣、こんな時にそんな興ざめなことを言うなよ」

翌日、藤堂澄人の大々的な宣伝のおかげで、小林家中が九条結衣の妊娠を知ることとなった。

九条結衣：「……」

こんなキチガイな夫を持つと、突然疲れを感じた。

こいつがこんな反応をするなら、子供が生まれる時に一緒に知らせた方がよかったかもしれない。

今や小林家中、祖父母や叔父叔母から、従兄弟とその嫁、そして3歳の息子九条初まで、みんな彼女を陶器の人形のように大事に扱っている。