894.何事も、私が決める

彼女は席から立ち上がり、「藤堂社長が一時的に不在だからといって、誰も何か企んではいけません。何か企む前に、自分にその力があるかどうかよく考えてください」と言った。

九条結衣のその言葉は、全員に向けられたものだったが、その鋭い眼差しは田中真斗の顔に直接向けられており、田中真斗の表情は次第に暗くなり、顔の表情さえ歪んでいった。

「私は現在、藤堂グループの株式50%を保有しています。これが何を意味するのか、皆様にわざわざ説明する必要はないでしょう。一言だけ申し上げます。藤堂グループへの資金調達は可能ですが、いつ、誰から資金調達するかは、すべて私が決定権を持っています」

言い終わると、彼女は会議室にいる誰にも視線を向けることなく、部屋を出て行った。

彼女が最後に残した言葉は、他の人には言える立場にはなかったが、九条結衣にはその資格があった。

藤堂グループの50%の絶対的支配権こそが、彼女の最大の後ろ盾だった。

会議室を出た後、九条結衣は藤堂澄人のオフィスに向かい、ドアを閉めるとすぐに涙を流し始めた。

彼女は机の上で、藤堂澄人がいつの間にか取り替えた写真を見つめた。元々は彼女一人の写真が入っていたフレームが、今では彼女と藤堂澄人の2人の写真に変わっていた。

たった1枚の写真であっても、写真の中の藤堂澄人の目には深い愛情が満ち溢れているのが見て取れた。

松本裕司が以前彼女に言った言葉を思い出した——

「奥様は社長のすべてです。もし奥様がいなくなれば、これらの物質的なものは意味を持たなくなってしまいます」

九条結衣の心は、ズキズキと痛んだ。

彼女は写真立ての写真を優しく撫で、涙がポタポタと落ちていった。

彼女は一人でいる時だけ、涙を流すことができ、何も気にせずに彼女の藤堂島主のことを考えることができた。

「あなたの大切な人がいじめられているのよ。本当に私のことを愛しているなら、早く戻ってきて。あの老いぼれたちに私をいじめさせないで」

彼女の声には、明らかな涙声が混じっていた。

そのとき、オフィスのドアがノックされた。

彼女は急いで写真立てを置き、ティッシュで顔の涙を拭い、自分が普通の状態に見えるのを確認してから、平静な声で言った:

「どうぞ」