「もう、お母さんのことは気にしないで。私はもうこの年だし、孫だってこんなに大きくなったのよ。再婚なんて、それに、たとえ再婚するとしても、私みたいな離婚歴があって子供もいる女が、石川誠さんの人生を台無しにできないわ。それに、彼は私より2歳も若いのよ。」
2歳若いくらいで何が問題なの?
九条結衣は少し不満げに思った。芸能界では10歳以上年の差があるカップルだっているじゃない。それでも仲睦まじくやっているじゃないか。
「でも、もし石川教授が好きな人はお母さんだったら、どうするつもりですか?彼は今まで独身で、もしかしたらお母さんを待っているのかもしれませんよ?」
九条結衣は真剣な表情で小林静香に尋ねた。彼女が一瞬戸惑ったのを見て、すぐに首を振って否定した:
「そんなはずないわ。彼の目が悪いわけないでしょう?彼の周りにはたくさんの優秀な女性がいるのに、わざわざ離婚歴があって、こんな大きな娘がいる私を選ぶなんて。」
九条結衣は言いたかった。確かに石川教授の周りには優秀な女性が多いけれど、お母さんだってそれらの女性に引けを取らない。たった一人の男に騙されただけで、こんなに自分を卑下する必要があるのだろうか?
でも九条結衣にもわかっていた。いくら言っても母は聞く耳を持たないだろうから、最後は黙ることにした。
ただ石川教授のことが少し気の毒に思えた。もし本当に母のことが好きなら、この恋の道のりは険しいだろうな。
小林静香と話をした後、九条結衣は黒崎芳美のことで落ち込んでいた気分が、瞬く間に良くなった。
小林静香はA市に長く滞在せず、ただ九条結衣に自分の身を大切にするように、何か困ったことがあったら助けを求めるようにと、何度も念を押しただけだった。
今、藤堂グループは危機的状況にあった。社内の人間だけでなく、他の企業も誰もが一枚噛みたがっていた。
ただし、藤堂グループは藤堂澄人の手によってあまりにも強大に発展したため、このような大財閥を誰が飲み込もうとしても簡単にはいかないが、一部の利益にあずかることは難しくなかった。
藤堂グループではここ数日、株主総会が何度も開かれ、資金調達の件について話し合われていた。