九条結衣は手に持った書類を握りしめた。この中の金額は、確かに以前九条グループの株式を売却して得たものだった。
本来はこの資金を全て誠和の技術開発に投資するつもりだった。
今日の午後、彼女はこの資金を動かして、まず藤堂グループを手中に収めようと考えていたが、どう切り出せばいいのか分からなかった。
結果として、母が自ら彼女を訪ねてきて、融資計画までこんなに詳細に作ってくれた。もう彼女が頭を悩ませる必要はなかった。
「ママ」
彼女は目が熱くなり、小林静香の胸に顔を埋めた。
人前で泣くのは嫌だった。他人を自分と一緒に不幸にしたくなかったが、今は抑えきれなかった。
瞬く間に涙が目を潤した。
小林静香は彼女を抱きしめ、子供をあやすように背中をさすりながら言った:
「ママはお金持ちじゃないけど、このお金はあなたのものよ。誠和もあなたのもの。好きなように使っていいの。ママは口出ししないわ。ママに手伝えることがあったら、遠慮なく言ってね。恥ずかしがることないわ。ママにはあなた一人しか娘がいないんだから、あなたを助けないで誰を助けるの」