910.IPアドレスの調査

一歩間違えれば、藤堂グループの資金繰りが完全に破綻し、立て直すのはさらに困難になるだろう。

松本裕司は考えた末、自分の考えを正直に述べた。「現在の藤堂グループの状況では、着実に進めるしかありません。まずはこの時期を乗り切り、株価が安定してから、他のプロジェクトの展開を考えましょう。」

実際、この跨海大橋プロジェクトは、初期投資は大きいものの、収益も非常に見込めるものだった。

覚悟を決めて実行すれば、藤堂グループの危機も本当に乗り越えられるだろうが、それはリスクを伴う賭けでしかない。

今の藤堂グループにはそのようなリスクを取る余裕はない。

九条結衣は彼の意図を理解し、考えた後で言った。「では、誰かと協力してこのプロジェクトを進めるのはどうでしょう?」

「それも考えましたが、今の藤堂グループは困難な状況にあり、この機会に藤堂グループを圧迫しようとする企業は山ほどあります。本当に協力してくれる企業があったとしても、この機会に厳しい条件を突きつけてくるでしょう。それは私たちにとって得策ではありません。」

九条結衣は頷き、しばらくの沈黙の後で言った。「この件については、よく考えてみます。あなたは先に仕事に戻ってください。」

「はい、奥様。では失礼いたします。」

松本裕司が去った後、九条結衣は椅子に寄りかかり、目を閉じて休息を取りながら、この数日間に起きた出来事を整理した。藤堂澄人がアメリカで事故に遭った時の一連の出来事も含めて。

30分後、彼女は目を開け、久しぶりに見覚えのある電話番号に電話をかけた。

すぐに電話は繋がった。「結衣お嬢様、やっと私に電話をくれましたね。」

九条結衣は半秒の沈黙の後、言葉を選びながら口を開いた。「住所を調べてほしいの。」

彼女は電話で大まかな状況を説明した後、電話を切った。

両手で顔を強く擦り、自分の精神状態をより良くし、思考をより明確にしようとした。

澄人が父親の死因と小林晋という副操縦士に問題があることを突き止めたとたん、小林晋は死亡し、そして彼が帰国しようとした矢先に、あのような大きな交通事故に遭った。

父親の死亡事故の調査は、澄人が密かに進めていたはずなのに、なぜ相手は澄人の動きを常に監視しているかのように、すべてを把握していたのだろうか。