897.藤堂澄人は完全に死んでしまった

夏川雫は彼女の一連の質問に言葉を失った。

「まだ何も決まってないのに、結婚の話なんて。前にも言ったでしょう、自然の成り行きに任せて、一歩ずつ進めばいいじゃない。」

夏川雫は九条結衣に自分と田中行との恋愛問題について話したくなかった。彼女が藤堂澄人のことを思い出して辛くなるのを恐れて、さりげなく話題を変えた。

「今日、広栄に新しいスイーツ店がオープンしたの。味がとてもよくて、甘すぎないの。あなたが甜品好きだって知ってるから、わざわざ誘いに来たのよ。」

九条結衣にはスイーツを食べる気分なんてなかったが、夏川雫が自分のことを心配して、わざわざ来てくれて、慰めようとしていることはわかっていた。

彼女の好意を無下にせず、頷いて承諾した。

「いいわ。」

しかし、二人がスイーツ店に着いて、気分が立て直る前に、九条結衣はもっと嫌な人物に出くわしてしまった。